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C2C時代のブランディングデザイン
マーケティングはサイエンスではなく、アートだ

2018年07月01日

今回は日清食品「日清カレーメシ」のインタビュー編。ブランドマネジャーの金子大介氏に聞きました。

日清食品の「日清カレーメシ」は、2016年8月に簡便性の高い“湯かけ調理”へとリニューアル。年間の
売り上げが2倍にアップした

細谷:この連載は若い世代のマーケターとかデザイナーにメッセージを送りたいと考えています。商品やブランドをつくるとき、さまざまな課題をどう解決したのか、ご担当者が重視している信念やお考えは何かを、インタビューから探っていきたいと思います。
今回は日清食品のヒット商品の一つ、「日清カレーメシ」を担当されたブランドマネジャーの金子大介さんに、ブランドの方向性をどう決めたのか、ご自身はどこで確信を得たのかなどをお聞きします。まずは金子さんのご経歴や今まで手掛けてきたブランドについて、簡単に教えてください。

金子:入社して最初は営業に配属されましたが、その後はマーケティング部に異動し、ブランドマネジャーの下でスタッフとして商品開発を担当していました。以来、ライスカテゴリーをメインでやってきており、2009年には「日清GoFan(ゴーハン)」という商品を発売しました。これは電子レンジで作るチャーハンでした。その後、経営戦略部門に異動しましたが、やはりライスカテゴリーのマーケティングに携わりたいという思いが強く、ブランドマネジャーの社内公募があったとき、自分で手を挙げました。

16年にライスカテゴリーのブランドマネジャーになり、「日清カレーメシ」(以下「カレーメシ」)の他、ラーメンスープにご飯を“ぶっ込んだ”商品の「ぶっこみ飯」シリーズも担当しました。また、17年8月には“ファストフード和食”がコンセプトの「日清 日本めし スキヤキ牛めし」も出しました。「カレーメシ」のバリエーション展開も行っていて、シーフードやハヤシに加え、18年3月に発売したキーマカレーも好調です。

金子大介氏。1998年4月、日清食品入社。営業部門、マーケティング部、経営戦略部門などを経て、15年3月に再びマーケティング部へ異動。16年3月より「日清カレーメシ」をはじめとした「カップメシ」シリーズ全体のブランドマネジャーを担当

ネーミングを変えて大成功

細谷:「カレーメシ」は以前、「カップカレーライス」というネーミングの商品でしたよね。

金子:はい、13年に発売しました。ただ、一般的にカレーライスという言葉からイメージするのはご飯とルーが別になっているもので、最初からご飯とルーが混ざっている「カップカレーライス」のような商品はカレーライスとは呼べない、といったご指摘がお客さまから寄せられたのです。そこで、佐藤可士和さんにトータルプロデュースをお願いし、ルゥでもレトルトでもない新ジャンルのカレーであることを明確に打ち出すべく、シンプルかつインパクトのあるネーミングとデザインを採用し、14年に「カレーメシ」として発売しました。
このときの「カレーメシ」は電子レンジで調理するタイプでしたが、16年8月に簡便性の高い“湯かけ調理”へとリニューアルしたことで、年間の売り上げが2倍にアップしました。

細谷:さまざまなリニューアルが成功したのですね。ネーミングでも「カップカレーライス」のままでは、市場開拓が難しかったと。

金子:カレーライスという言葉には、固定化されたイメージがあります。「カップヌードル」も、「カップヌードル」という商品であって、ラーメンとは違う食べ物だと認識されているはずです。独特のポジションを築き上げたからこそ、売れ続けていると言えます。「カレーメシ」もカレーライスではなく、まずは独特のポジションをつくることが大きなポイントだったのです。

ですから、発売当時は「カレーメシ」の新しさを、どう伝えるべきかをいろいろ検討し、たどり着いたコミュニケーションのコンセプトが“理解不能な新しさ”でした。CMが当時からめちゃくちゃで(笑)。社内でも、こんなCMを流していいのかという声があったくらいです(笑)。

コミュニケーションのコンセプト“理解不能な新しさ”を表現したCM「メンよりメシ篇」。カップヌードルを食べる保守的なおじさんに、カレーメシファミリーが強烈にアピール

クリエイティブなジャンプを

細谷:金子さんにとって、ブランディングデザインというと、何が中心にあるべきだと思いますか。人によっては広告のことやキャンペーンのことを言うこともあります。商品名こそがすごく重要だと言う人もいるでしょう。金子さんはどうお考えですか。

金子:私の場合、これは当社の姿勢でもあるのですが、やはり世の中にない新しい話題づくりが大事だと思います。そのためにはクリエイティブなジャンプをしなければならない。アイデアを徹底的にとがらせて、とがらせて、世の中に出していくというイメージです。

もちろん、とがらせることでリスクも生まれます。だからこそ、最初の戦略プランである商品コンセプトをしっかりと考えることがブランドマネジャーである私の仕事です。一見するとぶっ飛んだようなクリエイティブでも、そこへ行き着くまでには厳密にリサーチしたり分析したりしています。いきなり突拍子もないアイデアからスタートするわけではないんです。ターゲットや競合の分析を地道に積み重ね、しっかりとした商品コンセプトが出来上がれば、クリエイティブでどんなにジャンプをしてもぶれません。

細谷:金子さんらしさ、といったものはありますか。

金子:ターゲットが若者なので、言葉の一つひとつがどういう文脈で若者に刺さるのかを重視しています。どんな言葉を使えば若者に受け入れられ、ネットで拡散してくれるだろう、といったことを常に考えています。この言葉を拡散させたい、この言葉だったら絶対にこのブランドは成功すると思えば、その言葉に合うクリエイティブを考えてください、と広告会社さんやクリエイターの方にお願いします。他の企業では、調査なども含めて広告会社さんと一緒になってやっていくケースが多いと思いますが、当社は自前でやるのが基本スタンスです。最後のジャンプのところだけを、ご相談する形です。

例えば「カップヌードル ぶっこみ飯」の商品コンセプトは「罪深き、うまさ」です。ラーメンを食べたあとのスープにご飯を入れて食べる若者たちの行動や、その文脈をひも解いていくと、「罪深き、うまさ」という言葉に行き着きました。つまり、ラーメンスープとご飯という炭水化物に炭水化物を組み合わせるという、炭水化物を敵視するような今どきのトレンドに逆らった背徳感が、おいしさを助長していることに気付いたんです。そして、この「罪深き、うまさ」というコンセプトを文脈化するようなコミュニケーションを考えてください、とお願いしました。

調査だけでは出てこない

細谷:そういった発想法や考え方は、どうやって身に付けたのでしょうか。

金子:肌感覚を大事にすることでしょうね。自分の言葉で話すためには、多くの現場に行って、いろいろな情報を集める必要があります。だから行列ができているラーメン店に行ったり、話題になっている映画を見たり、新しくオープンした施設もすぐに訪れたりします。必ずしも、すべてが仕事に結び付くとは限りません。しかし、おのおのは全く関係ない要素でも、あるときに関係なかったはずの要素がぱっと、結び付くときがあります。そういう瞬間が、私にとっては非常に重要です。調査だけでは出てこないことが頭に浮かびますから。

日清食品ホールディングスの安藤宏基CEOは、ブランドマネジャーに必要なセンスとして「飽くなき好奇心」「非常識な発想」「コンセプトデザインのセンス」「先を読む予知能力」「勝つまでやめない情熱」「自己否定する勇気」「肌感覚を持つ」の7つを挙げています。さらに、安藤CEOは、マーケティングはサイエンスではなくアートだとも言っています。まさに肌感覚なんです。センスがないなら、インプットを増やすしかありません。だから、当社の商品のターゲットである若者が好む場所に行く、彼らが食べているものがあったら食べてみる、彼らのコミュニティーにも参加するなど、さまざまな形で若者に近づいていく必要があります。

もちろん若者は時代と共にどんどん変わっていくので、追い掛け続ける必要があります。年齢的に分からないことも多いですが、少しでも近づいていこうとしています。一番良くないのは、分かった気になってしまうこと。いつまでも、分からないという状態が続き、少しでも近づいていこう、としている状態こそが、一番いいのかもしれません。

細谷:なるほど。本日はありがとうございました。
(日経クロストレンド2018年5月28日掲載の内容を転載しています。)


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