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C2C時代のブランディングデザイン
スポーツとファッションで異なるブランド作り、少しずつ変えたい(インタビュー編)

2020年02月15日

ブランディング・プランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。今回は北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターに就任した相澤陽介氏へのインタビュー編。

相澤陽介(あいざわようすけ)氏

ソニー企業社長・チーフブランディングオフィサー
1977年10月25日埼玉県生まれ。多摩美術大学染織デザイン学科を卒業後、コム デ ギャルソンを経て2006年にホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)を立ち上げる。これまでに「Moncler W」「BURTON THIRTEEN」「adidas Originals by White Mountaineering」などのブランドのデザインを手掛ける。17年ハンティングワールドのクリエイティブディレクター。19年には北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターに就任。その他、多摩美術大学生産デザイン学科の客員教授も務める。

細谷 2019年2月、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌は、ホワイトマウンテニアリングのデザインで知られる相澤陽介さんが、クリエイティブディレクターに就任したことを発表しました。ポスターグラフィックをはじめ、オフィシャルグッズなどのデザインも担当しています。相澤さんと言えば、ファッションブランドで知られていますが、スポーツという新分野を手掛けることに、ためらいとか戸惑いのような気持ちはありましたか。

相澤 全然ありませんでした。僕はサッカーの経験はなかったのですが、サッカーを見ることは大好きでした。仕事柄、欧州に行く機会が多く、現地のサッカー場にもよく足を運んでいました。ファッション業界では、一番か二番を争うぐらい、サッカーを生で観戦しているのでは、と自負しています(笑)。

 だからコンサドーレから声をかけられる以前から、日本のクラブチームもこんなデザインがあったらいいのでは、などと考えたことはあります。ただ、日本のプロスポーツの魅力は海外とは全く違うものだと思います。日本のプロスポーツは、いわば“体育会”の延長のようなもので、スポーツというよりも体育のイメージがあるような気がします。それが選手のあるべきイメージとか、ユニホームなどのデザインにも反映されているのではないでしょうか。

相澤氏が就任後に初めて作成した、北海道コンサドーレ札幌の前期日程のポスターグラフィック第1弾(画像提供/北海道コンサドーレ札幌)

相澤氏が手掛けた後期日程のポスターグラフィック。前期と同様に、選手が並んでいるだけの写真ではなく、躍動感がある表現を打ち出した(画像提供/北海道コンサドーレ札幌)

 一方、僕らが欧州サッカーに魅了される理由は、もうシンプルにかっこいいからですよ、まるでファッションブランドを見ているような感じです。そこの違いは大きいですね。実際、イタリアの「GQ」や「Esquire」といった著名な男性ファッション誌の表紙をロナウドなど有名選手が飾っています。移動時のオフィシャルスーツやオフでの服も有名ブランドがサポートしている。

 もちろん日本のクラブチームもオフィシャルスーツを有名ブランドが手掛けてきています。しかし、それでも欧州と何かが違う。それはクラブチームとしてのブランドの一貫性にあると思いました。それぞれは、すごくいいものです。しかしブランディングは、単純にかっこいいスーツを着ることでないんですよ。

 ホワイトマウンテニアリングもそうですが、ファッションの場合、単にセンスのいい服を作って売るだけではなく、どんなメッセージを込めるか、どういう像に向けて自分の考えていることを形にするか、というところまでがセットです。そこにはカタログやインビテーションのデザインまで含んでいます。だからブランドとして伝わる。ファッションの視点で見ると、こうした部分が弱いと思いました。

細谷 今回、クリエイティブディレクターとしてタッチポイントをコントロールしながら、ポスターやオフィシャルグッズなどをブランディングの視点で全般にわたって見ていくのですね。

相澤 はい。既存のものをリスペクトしながら、まずはポスターやウェブ関係など、いわゆるアウトプット商材から着手しています。びっくりするぐらい多いんですよ。いきなり全部を変えるのは難しいので、3年で結果を出そうとしています。

 例えばチケットについても見直したいと思っています。セリエAのチケットって見たことありますか? すごくかっこいいデザインで、大事に保管しておきたくなるほどです。でも日本のチケットは、販売会社が扱っており、フォーマットが決まっていますから、簡単にデザインを変えることは難しい。でも、そうしたところも見直していきたいですね。コンサドーレのスタッフの名刺だって、もっと工夫できるかもしれない。そうした観点で1つひとつアップグレードをしていく。まだ本当に手探り状態ですが、続けていきたいですね。

欧州のサッカークラブに学ぶ、”かっこいいポスター”とは

細谷 ポスターのデザインも今までとは大きく違います。Twitterなどを見るとサポーターの反響がすごいですね。

相澤 まず初めに手掛けたのは、かっこいいポスターとは何かを分析したことでした。欧州サッカーのポスターの上にコンサドーレの選手の顔写真を置いてみると、やっぱり違います。スポーツとファッションのカメラマンの視点が異なるのかもしれません。

 日本の場合、開幕戦のポスターはどこもほとんど同じ。全員がグラウンドで並んでいるだけの場合もある。選手名鑑の写真もどれも変わりません。クラブチームとして撮っておきたい写真はありますが、ファンが見たい写真とは違うのではないでしょうか。ファッションのカメラマンやデザイナーを連れて選手の写真を撮ろうとすると、「こんな写真は、今まで見たことがない」と言う選手がいたほどです。

既存の製品もあるため、相澤氏が携わる新しいアパレルやグッズを「CS Clothing」とした他、製品の紹介写真では新しい見せ方を打ち出した(写真提供/北海道コンサドーレ札幌)

アパレルやグッズを強調するというより、ファッション誌のグラビアのようなイメージだ(写真提供/北海道コンサドーレ札幌)

細谷 ご自身でファッションブランドを立ち上げる場合、お客さまと相澤さんの1対1という関係でブランドを考えれば良いですが、サッカークラブとなると選手やフロント、サポーターもいます。いろいろな関係者がいる中で、どうやって束ねていくのでしょうか。またファッションブランドとサッカーブランドの作り方の違いは何でしょうか。

相澤 確かにサッカーに限らず、プロスポーツの経営って、非常に多岐にわたり関係者も多い。ただコンサドーレの場合は、トップダウンの会社という点が大きいと思います。野々村芳和という社長が社内はもちろん、サポーターの前にも出ます。選手出身でクラブ運営の問題点も理解している。グッズ販売や来場者の動向だけでなく、他のスポーツの動きも見ています。僕も経営者として数字を追いかけてきたので考え方は同じです。野々村さんの存在はすごく重要で、そうした方がいたことでスムーズに運んだと思います。サッカーの話は全然していませんね(笑)。

 ただ、プロスポーツとファッションのビジネスの違いも分かってきました。強くなると売り上げも当然、伸びますが、それが桁違いです。例えば「ルヴァンカップ」(JリーグYBCルヴァンカップ)で優勝すれば、賞金だけでなく来年のユニホームに星印が付きます。だから買い直すファンが大勢、出てきます。何かのきっかけで、一気に売り上げが変わる。19年のルヴァンカップは残念ながら、決勝でPK戦の末に川崎フロンターレが初優勝を果たしました。僕もピッチにいました。個人的に言えば、優勝すれば3年間でやろうと思っていた目標が一気に達成できると思っていましたので、PK戦のときはもうひやひやでした。一瞬で決まってしまうところが、すごい。もうアドレナリンが出まくりました。

選手をかっこよく見せるにはどうしたらいいか。欧州のサッカークラブに学んだ(写真提供/北海道コンサドーレ札幌)

撮影にはファッションのカメラマンを使ったという。このため、製品を見せるだけの写真とは異なっている(写真提供/北海道コンサドーレ札幌)

 ブランドの作り方も違いますね。ファッションって好きな人に向けて作るものですが、サッカーはあまりにもマス向けです。マスであることは守らないといけません。デザイナー目線の「かっこよさ」だけでは難しいでしょう。例えば、ぬいぐるみのようなファンシーグッズでも、子供が欲しい商品は残さないといけませんが、新しいアイテムも求められます。既存のものと共存していくことが前提になっています。強引にリブランディングを推し進めても、運営面から見てあつれきを生んでしまう。それがサッカークラブのブランディングには必要だと思います。

細谷 なるほど。ファンとは違い、ビジネスの視点でサッカーを見るのはまた、別の面白さがありそうです。勝負そのものがブランドに影響するような一瞬は、ビジネスの世界ではあまりないでしょう。本日は貴重なお話をありがとうございました。

相澤氏とインタビューアーの細谷正人氏(右) (写真/丸毛透)

(写真提供/北海道コンサドーレ札幌)

(日経クロストレンド2019年12月27日掲載の内容を転載しています。)


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